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不思議なきのこを科学する - そして瞑想と悟りへ

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[左は普通の状態の脳内のつながり、右は不思議なきのこが効いている状態でのつながりを視覚化したもの。右図では脳内のネットワークが活性化されている様子がはっきりと分かる] [この記事は、文庫本10ページ程度の長さがあります] さて、みなさん、マジックマッシュルームは知ってますか。 シロシビン、あるいはシロシンという幻覚性の成分を含む不思議なきのこのことで、日本でもヒカゲシビレタケとか、普通にその辺に生えてるかもしれないきのこなんですけど。 2002年に法律で規制されたのですが、それ以前はオランダ産などの乾燥きのこが、渋谷などで普通に買えました。 ビートルズ世代にはおなじみの LSD という強力な幻覚剤があります。 彼らの名曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド (Lucy in the Sky with Diamond)」は頭文字が LSD になることで知られたサイケデリック・ソングです。 サイケデリックというと今はファッション的な言葉かもしれないませんが、これはもともとは LSD などの幻覚剤の呼称です。 マジックマッシュルームもサイケデリクスの仲間であり、LSD ほど強力ではないものの、作用はよく似ていると言われます。 サイケデリックという言葉は、「精神を開く」という意味の造語です。 かつてイエローマジックオーケストラが富士フィルムのカセットテープ用に作った「開け心 - 磁性紀のテーマ」という曲の「開け心」も、このサイケデリックの意味しているのでしょう。 ちなみに、この「開け心」という曲は、長らくアルバム未収録でしたが、今は [こちらの CD] にステレオヴァージョンで収録されてるんですね。そのうち聴いてみたいところです。 (テレビCM用のため、モノラルバージョンが存在し、キャンペーングッズとしてプレゼントされたカセットブックに収録されたりしてたんです。この辺の事情については、[ こちらのページ ]に詳しい情報があります)   *  *  * さて、マジックマッシュルームと呼ばれる不思議なきのこに少し話を戻しましょう。 このきのこの持つ、サイケデリクスと呼ばれ、「精神を開く」という、その不思議な効果は一体どんなものなのでしょうか。 その説明をする前にひとつ、おもしろい科学的な研究を

5つのステップで気楽にカルマを落としましょう

1. 自分のできる範囲で、悪いことはやめ、善いことを心がける。 2. 悪いことをしてしまったら、次はそうしないように、よくよく心がける。 3. そうは言っても、また悪いことをしてしまうだろうから、そんな自分のことを許してあげる。 4. けれども、自分を甘やかさない。悪いことをしてもいいんだとは思わない。 5. そうやって少しずつ自分の中の悪い部分を落としていく。 以上が気楽にカルマを落とす5つのステップです。 あれっ、と思った方もいるかもしれませんが、話は簡単ですよね。 それじゃ、もう少し詳しく見てみましょうか。   *  *  * カルマという言葉の意味を 「何か悪いことをして、その結果、今の苦しみがあること」 そんなふうに理解している方が多いかもしれません。 特に「悪いことをして」という部分を、いわゆる前世や過去世において、ととらえてらっしゃる方は、「どうすればカルマを落とすことができるのか」あるいは「どうすればカルマを断ち切れるのか」とお悩みのことでしょう。 ですが、前世と考えても、過去世と考えても、あなたの人生であることには変わりはないのですから、悪いカルマを断ち切り、悪いカルマを落とそうとするとき、何か難しいことが特別あるわけではないのです。 するべきことは簡単です。 日々を善(よ)くいきる。 ただそれだけのことです。 ぼく自身、自分の人生が、妙な具合によじれてしまっているもので、これは誰かにお祓いでもしてもらったほうがいいんじゃないかと考えたこともあります。 もちろん、お祓いにはお祓いの効き目がありますので、あなたがお祓いを必要とするなら、お祓いをしてもらえばいいのです。 けれども、カルマという言葉のもともとの意味に立ち返るならば、 「悪いことはやめ、善(い)いことをする」 これだけで、悪いカルマは断ち切られ、苦しみのカルマは落ちるのです。 カルマというのは、もともとのインドの言葉です。 仏教では業(ごう)と訳され、なかなか重苦しい響きがありますが、もともとは「行ない」というほどの、軽い意味の言葉です。 この「行ない」という言葉が、どうしてそんなに重い意味を持つようになったかというと、「善い行ないは善い結果をもたらし、悪い行ないは悪い結果をもらす」という「因果応報の考え」

イケダハヤトは本当にだめなブロガーなのか

ブログで稼ぐことの難しさは、みなさん、百も承知だと思います。 ホントーに難しいですよね。 そして、ブログで稼ぐ方法が、実にいろいろあることも、みなさん分かっていらっしゃいますよね。 イケダハヤトさんという、東京を脱出して、高知に住んでいるブロガーさんのことは、みなさんご存知でしょう。 ネット上では、どちらかというと嫌われ者の人です。 「例として、利用してもいない転職サービス等を収入重視でリピーターに何度も押し付けるイケダハヤト氏のブログがある」 などと言われていたりもします。 ぼくはイケダハヤト氏のあり方を全面肯定するわけではありませんが、彼の主張にはそれなりの合理性があると思っています。 自分が利用していなくても、自分の記事を見にくる方が見たいと思う広告を提供することは、「押し付け」ではなく、あくまでも「宣伝」として許される行為だと思います。 ホメオパシーのレメディの紹介も同様です。 社会の中で生きざるを得ない人間としては、やっていい正しいことと、やったらダメなこと、間違ってることを意識せざるを得ません。 けれども、イケダ氏のやってることを全部「ダメ」と思ったら、せっかくのチャンスを逃がすことにもつながります。 一方で、イケダ氏にダメ出しをする人にも一理あるわけで、その辺りのところは「よく分かった上で」使い分けをする必要があります。 自分の得意分野で、イケダ氏のオーケーな部分は利用させていただき、ダメな部分は、きちんと否定する。 そんな形で「イケダ氏」という「アイコン」=「ネームバリュー」を利用することこそ、ネットで趣味と実益を兼ねるための秘訣に違いないと、思うのです。 ------------------------------ ☆こちらもどうぞ [ 惜しい! イケダハヤト氏の「三宅洋平不支持」発言 ] [ お見事!イケダハヤト氏の必殺「炎上商法」カウンターパンチ ] [ イケダハヤト氏が「お試しあれ」と言ったホメオパシー半可通講座 ] [ 瞑想のお話: ヴィパッサナー随想 #1 -- ピサヌロークの午後 ] [ 本の紹介:「呪術師カスタネダ」 ] [ 脱会社人: 気分はオフグリッド・あなたは自由に生きたいですか、生きられますか ] [ 最高の幸せ、フロー体験を知ってますか?

精神医療における減薬の問題をめぐって -- 「不適応状況」についての覚書

この記事では、精神医療における減薬の問題を「不適応状況」という視点から論じてみます。 まず、アイデンティファイド・ペイシェントの概念を用いて、「不適応状況」と「不適応症状」いう二つの言葉を提案します。 そして、減薬に関して「不適応状況」という視点からその問題点を考察し、解決へ至る道筋を提案します。   *  *  * 精神的症状を引き起こしている「患者」について、「アイデンティファイド・ペイシェント(特定された患者)」という言葉をわざわざ使うのは、次のような考え方によります。 1. 精神的症状を引き起こしている「患者(ペイシェント)」は、その人自体に問題があるとは必ずしも言えない。 2. 関係性(たとえば家族)の中で問題があるときに、その問題が関係性の中で弱い立場にある人物に「症状」として現れる場合がある。 3. 関係性の問題が原因で「症状」が現れた人物は、ただ「患者」として見るのではなく、「患者」として「特定された(アイデンティファイド)」存在としてみたほうが問題を解決しやすい。 この考え方に沿って考えるとき、「不適応状況」という言葉は、「アイデンティファイド・ペイシェントが発生している状況」を表すものとします。 つまり、関係性の中で問題があり、その関係性の中の誰かが「患者」として振舞っている状況です。 また、「アイデンティファイド・ペイシェント」に生じている症状を「不適応症状」と呼ぶことにします。 なお、このアイデンティファイド・ペイシェントという言葉はもともと家族療法で使われるものです。家族療法について興味がある方には、専門書なのでちょっとお高いですが、こちらがおすすめです。 [ 「家族療法のヒント」東 豊著(金剛出版 2006) ]   *  *  * 精神医療の場面においては、医者が診断をし、診断に応じて薬を処方します。 精神医療の診断にも基準がありますが、基準はあくまで「症状」をもとにしたものであり、生理学的な根拠があるものではありません。 そのため、基準の判定には恣意性があり、適切な投薬がなされているかどうかの客観的な判断は困難です。 そうした状況の中、他の様々な要因も重なって、日本の精神医療は世界的に見ても他種類の薬剤を多量に投与する結果になっています。 不必要な薬剤の投与によって

あら不思議、指先を動かせば「金縛り」は簡単に解けちゃいます

金縛りでしょっちゅう恐ろしい思いをしているあなたに朗報です。 なんとも簡単な方法で、金縛りを解くことができるんです。 金縛りになったら、指先を動かしてください。 それだけで、金縛りからだんだん抜けだして、目を覚ますことができます。 簡単すぎて、拍子抜けしますよね。 ぼく自身、これで一発で抜け出すことができました。 こんど金縛りにあったときは、だまされたと思って試してみてください。   *  *  * なお、人によって動かしやすい部分に違いがあるようです。 ぼくの場合は、手の指先で一発でしたが、それがうまくいかなければ、手首、ひじ、足先など、動かしやすいところを探してみてください。 「目を動かすといい」という方や、「体全体に力を入れると、だんだん抜けてくる」という方もいます。 それと、あまり緊張した状態だと、うまく体を動かせない場合があるようです。 その場合は、体を動かす前に、 1. まず、ゆっくりと深呼吸します。 2. それから、「これはただの夢だから怖くなんかないぞ」と自分に言い聞かせて、 3. さあ、指先をしばらく動かしてみましょう。 寝る前には、「金縛りにあっても指先を動かせば大丈夫」と、脱出法を確認してから、準備万端おやすみくださーい。 ちなみに、本城達也氏の [ 身動きがとれない恐怖の「金縛り」 ] という記事には、「金縛りとは何か」、「金縛りという言葉はいつ生まれたか」など、いろいろな話が載っていておもしろいですよ。 それから、みなさんの金縛りの体験談や、解き方など、金縛りにまつわるいろいろをコメント欄に書き込んでいただけたら、とっても嬉しいので、よろしくね!! ------------------------------ ☆こちらもどうぞ [ 瞑想のお話: ヴィパッサナー随想 #1 -- ピサヌロークの午後 ] [ 本の紹介:「呪術師カスタネダ」 ] [ 脱会社人: 気分はオフグリッド・あなたは自由に生きたいですか、生きられますか ] [ 心の科学: 最高の幸せ、フロー体験を知ってますか? ] [ 哲学から瞑想へ: 人生は哲学するには長すぎる 01 ぼくは万年厨ニ病 ] ------------------------------

お見事!イケダハヤト氏の必殺「炎上商法」カウンターパンチ

東京を脱出して高知県で田舎暮らしをしている有名ブロガー、イケダハヤト氏はご存知でしょうか。 イケダ氏が、「疑似科学商法」としてネット上で叩かれる、ホメオパシーについての記事で見せてくれた「炎上商法」が、あまりにも見事なので、今日はその紹介をさせていただきます。 「炎上」というのは、ネット上で多くの人の「気に触る」ことを書いたために、批判が殺到する状態のことですが、これをわざと起こすことで周知度を上げ、読者を増やすのが「炎上商法」です。 今回のイケダ氏の「炎上芸」は、ひとつめの「誘い」の記事と、それに続く決めの「カウンターパンチ」の二段階になっていることが特徴です。   *  *  * 「誘い」の記事の題名は、 [【ホメオパシー】ムカデや蜂に刺されたときは「エイピス」を飲むと治るらしい。] というものです。 これは次のようなストーリーで、「効き目の分からない商品」を上手に宣伝するものとなっています。 1. まず、イケダ氏は、「ホメオパシーって怪しい」、「個人的にはあんまり信用してません」と書きます。 2. それなのに、自分の知人二人を含め、Twitter からの複数の発言を紹介しながら、「ホメオパシーのエイピスというレメディ(薬のようなもの、実態は無害なアメ玉)は「効くんだろうなぁ」と述べます。 3. その上で、自分は使ったことがないし、なぜ効くのかは「よくわからない」が「値段はリーズナブルなので、田舎暮らししている方はいざという時に『お試しあれ』」として、エイピスという商品を売るアフィリエイトのリンクを紹介しています。 新聞で見かける「健康食品」の広告をひとひねりした感があり、これだけでも、イケダ氏はじゅうぶん優秀なコピーライターだと思います。 けれども、ここで疑問が生じます。 イケダ氏のブログの読者層は、都会に住んで田舎暮らしにあこがれているタイプの人ではないかと思われます。 蜂やムカデの毒に効くかもしれない 30粒 540円の商品の宣伝をして、いったいどれだけの手数料収入が見込めるでしょうか?   *  *  * 結論から言うと、一つ目の記事は炎上を目的としたただの誘い記事にすぎません。 そして実際に、ネット上の「正義派」の人が集まってきて、「ホメオパシーのような、疑似科学の詐欺まがい商品をネット上

イケダハヤト氏が「お試しあれ」と言ったホメオパシー半可通講座

ぷちウェブ作家のとし兵衛です。 アルファブロガーとして毀誉褒貶半ばする高知県在住・脱東京派のイケダハヤト氏が、[ 【ホメオパシー】ムカデや蜂に刺されたときは「エイピス」を飲むと治るらしい。 ] という大変おもしろい記事を書いていらっしゃいます。 この記事は、次のようなストーリーで、「効き目の分からない商品」を上手に宣伝するものとなっています。 1. イケダ氏は、「ホメオパシーって怪しい」、「個人的にはあんまり信用してません」と書いています。 2. それなのに、自分の知人二人を含め、Twitter からの複数の発言を紹介しながら、「ホメオパシーのエイピスというレメディ(薬のようなもの、実態は無害なアメ玉)は「効くんだろうなぁ」と述べています。 3. その上で、自分は使ったことがないし、なぜ効くのかは「よくわからない」が「値段はリーズナブルなので、田舎暮らししている方はいざという時に『お試しあれ』」として、エイピスという商品を売るアフィリエイトのリンクを紹介しています。 新聞で見かける「健康食品」の広告をひとひねりした感があり、イケダ氏はなかなか優秀なコピーライターだなぁと思います。 イケダ氏の「広告記事」については、それだけの感想です。否定も肯定も特にしません。   *  *  * イケダ氏はなぜこのような記事を書いたのでしょうか。 イケダ氏はブロガーとして大層な収入を得ていらっしゃるようですし、エイピスのような低価格の商品を紹介しても手数料収入はそれほど得られないでしょうから、この記事は特別に収入を狙って書いたものではないように思えます。 ネット上の「正義派」の人をからかいながらの、話題作りの「炎上商法」でしょうか。 そうだとすれば、狙い通りに「正義派」の人々が噴き上げてくれているようです。 ホメオパシーのような、疑似科学の詐欺まがい商品をネット上で宣伝するのはけしからん、というわけです。 そういう話題が好みのかたは、 こちらのまとめ記事をどうぞ。   *  *  * さて、ぼくはホメオパシーの信者ではありませんし、エイピスというレメディを誰かにすすめるつもりもありません。 そのことをお断りした上で、「ホメオパシーはなぜ効くのか」を説明することにしましょう。 ホメオパシーとは何なのか、そしてそれが「

アウシュビッツ、新潟知事選、安倍政権

いきなりアウシュビッツとは穏やかでないのですが、マミーさんというかたが、[ 小学校の図書室で思うこと ]  という記事を書いてらっしゃいます。 「アウシュビッツの図書係」(アントニオ・G・イトゥルベ著、小原京子訳、集英社) という本の紹介記事で、14歳の実在の少女をモデルに書かれた「限りなくノンフィクションに近い小説」とのことです。 自分の命を賭けてまで、本を守るとはどういうことなのか。この本の詳しい内容に関してはマミーさんの記事を見ていただくとして、この記事では、『極限状態においても人間という存在が持ちうる「勇気」という力』について、ゆるりと書いてみたいと思います。   *  *  * 昨日、2016年10月16日は、新潟県で知事選がありました。 原発の再稼働に積極的に異議を申し立てていた泉田現知事が、直前に立候補を取りやめるという奇妙な事態を経て、再稼働に反対する米山隆一氏が立候補し、当選したことは、原発問題の今後について、また、原発再稼働に象徴される日本の「総天然全体主義化」の行く末について、大きな問題を提起しているものと思います。 鹿児島での三反園の当選に続き、新潟においても原発再稼働に反対を表明する米山氏が、自民、新潟連合の押す森氏を破ったことは、地方の首長選において、「民意」ははっきりと原発再稼働に「反対」であることを示しています。 しかしながら、沖縄・高江の現状を見れば明らかなように、「中央」の権力機構は、反対派に対する徹底的な弾圧の姿勢を隠す必要すら、もはや感じていない模様です。 米山氏の勝利を手放しで喜ぶことはできず、これからの道行きの険しさを感じる所以です。 [2016.10.18 追記] なんとも意外なことに、 こちらの記事によると、米山隆一氏の「本音」は「原発賛成」ということのようです。 新潟県民の民意を裏切り、安易に「再稼働」を許すことのないよう、米山氏にはくれぐれもよろしくお願いしたいところです。   *  *  * さて、そのニッポンの「中央」を代表して立つ存在が、自民党総裁にして内閣総理大臣である安倍晋三氏ということになります。 そうであるからには、現在のニッポンの流れに反対の意を表明するために、「反安倍」をいうことは当然ではあるのですが、仮に安倍氏の「首」を切ることができたとして

死を想って空を見る - 絶望空間から抜け出すために

電通に勤務していた24歳の女性が自殺し、労基署が労災として認めたことが、一部で話題となっているようです。 日本の集団が宿痾として持っている「黒い」体質についてはさておき、この女性が落ち入ってしまった「絶望の空間」について、今日は少し書いてみようと思います。   *  *  * 社会的に生きる人間という存在のうち、多くの人は、こうした「絶望の空間」に直接入り込むことはなく、一生を終えるのだろうと思います。 けれども、そうした「空間」に入り込んで、逃げ出すことができなくなる、ごく少数の人以外にも、その一歩手前の「うつ的空間」を出たり入ったりする人はある程度いるわけですし、「うつ的」が「絶望」に転じるかどうかは、ほんの少しの偶然とか、ちょっとした気持ちの持ち方の違いとか、普段だったら取るに足りないようなほんとうに小さなことがらによって左右されたりするものなのだと思います。 それは、何か一つの原因がある、というよりは、小さなことの積み重ねによって、あるとき、「うつ的」から「絶望」に入り込んでしまう、というようなことだったりしますから、その流れを変えるということは、決して簡単なことではないのです。 ところが、その決して簡単ではないことが、ほんの小さなことがきっかけで起こる場合もあります。 その「小さなきっかけ」をどうやって見つけることができるのか、あるいは、たとえば、「絶望」に落ち入りそうな人と、その周りにいる人の間で、そういう「きっかけ」がどのように立ち現れうるのか、ということを書くことができたらと思うのです。   *  *  * 「死にたい」と思ったときに、空を見上げる。 そんな一つの行動が、世界を変えるきっかけになることもあります。 建物の中では、頭の上を見ても天井しか見えないかもしれません。 それでも、天井のその上には、空が広がっています。 その空は、いつも世界中の空とつながっていて、人間のちっぽけさと偉大さを見下ろしているのです。 あなたが死のうが生きようが、この青く広い空のもとでは、どちらも取るに足らず、けれども、そのどちらもが、どうしようもなく愛おしいありようなのだということに、あなたは気づくかもしれません。   *  *  * 「死にたい」と思うほどに絶望しているその人の、その絶望の気持ちをただそのまま

いんたーねっとトハ超次元的ニ縫イ合ワサレタ便所ノ落書ノ網目ナリ

その昔、世の中にワールドワイドウェブとかいう言葉が出回り始めたころに、「インターネットとは便所の落書きプラスアルファだ」と書いている人がいて、「なるほど!」とうなずいた記憶があります。 一方、「インターネットは錬金術の完成形である」というのが、ぼくの実感としてあります。 今日はこの二つの柱を使っていい加減な「小屋」でも立ててみましょう。   *  *  * 「便所の落書き」といえば、ばかばかしいもの、下品なもの、人を貶めるもの、大体がそんなようなものです。 残念ながら、役に立つ「便所の落書き」というのは、まだ見たことがありません。 インターネットというものが持つ、発言の自由さ・気軽さという特徴と、そのテクノロジーの大衆化が相まって、当初から「便所の落書き」的なものだったネットが、加速度的に「便所の落書き」化することになったのは当然のことと言えましょう。 ヘイトスピーチ「のようなもの」の蔓延に対して社会がどう対応すべきか、といった問題はさておき、便所の落書き「のようなもの」が同好の士の間で、共有され、拡大し、「価値」を生み出していく点が、インターネットの「錬金術」としての側面ということになります。   *  *  * ところで、錬金術とは何でしょうか。 それは、「金(きん)ではないものから金(きん)を生み出す方法」のことであり、言い換えれば、「無価値なものから価値を生み出す方法」のことです。 人類は素朴な錬金術を近代的な科学へと洗練させていく過程で、化学的には「ほかの物質から金を作れない」ことをまず知り、素粒子的には「金は作れるがコストが高すぎること」を知ることになりました。 (その過程で、原子力というパンドラの箱を開けてしまったことも興味深い事実です) そうして、名前こそ「科学」というものに変わりましたが、錬金術の時代から綿々と続く、それまでは無価値と思われていたものから価値を生み出すための研究が、現在も人類にとって大きな野望として存在していること自体には、なんら変わりはないように思われます。   *  *  * 「インターネットは錬金術の完成形である」と考える理由は、その手軽さと大衆性によります。 株式会社が生まれ、株式市場が成立し、近代国家の成熟が金本位制を不要とすることにより、為替市場が世界を覆うに

本の紹介: フロリンダ・ドナー「シャボノ」、アマゾンの奥地のヤノマミ族の暮らし

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南米ヤノマミ族の集落シャボノの写真 カルロス・カスタネダの呪術師仲間であり、人類学者でもあるフロリンダ・ドナーは、 「魔女の夢」という本が日本でも出版されています。 この「魔女の夢」という本は、彼女がベネズエラで呪術師として受けた修行を書いたもので、カスタネダの著作と同じく、西洋の近代文明が生み出した合理主義的世界とは異なる、別の論理によって成り立つ世界の持つ豊かさを感じさせてくれる良著です。 カスタネダのファンの方にも、彼の世界の隣の世界を描いた本として、興味深く読めること請け合いです。 (なお、 「魔女の夢」については、こちらにも短い紹介を書いております ) *  *  * さて、そのドナーに "Shabono" 「シャボノ」という未訳の著書があります。 たまたまサンフランシスコの古本屋で見つけて読んでみたところ、これが滅茶苦茶おもしろい。 こちらは、ドナーが、ブラジルとベネズエラの国境地帯のアマゾンに住むヤノマミという、原初の狩猟採集と素朴な農耕生活をしている人々の村で過ごした体験を描いたものです。 シャボノというのは、ヤノマミの人たちが作る環状の集落のことです。 この本は、人類の始原的生活の形を知る意味でもおもしろいし、エペナという幻覚剤の使用と変性意識の記述も興味深く、また、カスタネダの書く世界とも重なる呪術のあり方も十分に描かれ、一冊で三度おいしいと言いたくなる名著です。 こんなにおもしろい本が未訳のままなのはもったいないので、今この本の翻訳を進めています。 ペーパーバックで 300 ページほどの本ですが、ひと通りの粗訳は紙の上にできあがっていて、現在それを打ち込みながら、訳の直しをしている段階です。 といっても、勝手に訳しているだけで、どこかから出版できる当てがあるわけではありません。 出版社や編集者の方で、興味のある方がおられましたら、sut3t3@gmail.com まで、ぜひご連絡をお願いします。 なお、このヤノマミ族には、嬰児殺しの風習があり、 NHKの番組から劇場公開された「ヤノマミ~奥アマゾン-原初の森に生きる~-劇場版」 でも、その様子が描かれています。 また、番組ディレクターの国分拓氏の書いた 「ヤノマミ」(2013 新潮文庫) も読み応えがあります

改憲に王手。ニッポンはホントーに大丈夫なのか?

先の参院選で改憲派が三分の二議席を確保し、いよいよ日本の行く末には暗雲が垂れ込めているように思われます。 もんじゅは廃炉に向かう模様ですが、新型の「高速炉」という愚にもつかない選択肢で利権を温存しようとする勢力につける薬はありません。 沖縄・高江のヘリパッド建設現場では、民主主義とは程遠い手続きで、今日も貴重な自然が破壊され、反対運動をする市民に対して人権を無視した「弾圧」が続きます。 ニッポンという国は、ホントーに大丈夫なのでしょうか? そして、ぼくたち国民の一人ひとりは、こうした状況下で何ができるのでしょうか?   *  *  * うちの親父は建設会社に勤めて、公団関係の仕事をしていたので、役人や政治家の悪口をよく言ってました。 また、かつての東京オリンピックのころに生まれたぼくは、学生運動の時代は知りません。 若いころはSFをよく読みましたが、SF関係の人の文章に、学生運動の時代にSFなど読んでいると、運動の人たちがやってきて、お前らこの時代にSFなんぞにうつつを抜かしていていいと思っているのか、とアジられる、というようなことが書いてあったのを思い出します。 ぼくはと言えば、そんな時代に生きていたらアジられる側に回っただろう、まったくのノンポリで政治音痴の若者でしたが、チェルノブイリの事故をきっかけに、この社会の仕組みに目がいくようになりました。 SF小説を読んで、仲間とあーだこーだ言ってるだけの頭でっかちの人間だったぼくが、チェルノブイリをきっかけに、原発反対の運動に足を突っ込んだり、「障がい」者のための施設で働いたりする中で、この世の中にどんな問題があって、自分には何ができるのかというようなことを、自分なりに肌で感じながら考えることができたのは、人生にとって大切な財産になっていると思います。   *  *  * ぼくにとっての、そうした転換期は、二十代の末に訪れましたが、仲間と出していた同人誌に、そんな社会的な思いを綴ったところ、それを読んだ知り合いの女の子から手紙をもらい、 堀田善衛の「広場の孤独」をすすめられました。朝鮮戦争を題材に、ある新聞記者の政治に対する「コミットメント」を書いた物語です。 はじめて読む堀田善衛は新鮮で、実際に戦争を経験した日本人が、戦争という政治的事態とどう関わるかを思い悩む、

豊洲の影には何がある? 改憲と原発の再稼働について

みなさん、こんにちわ。 ぷちウェブ作家のとし兵衛です。 メディアは築地市場の豊洲移転問題でにぎわってますね。 いろいろと怪しい話が出てくるなか、石原慎太郎元都知事は「だまされた」などと無責任なことを言ってますし、問題を指摘する立場の小池百合子都知事は株を上げているようですが、さて、いかがなものでしょうか。 いきなりですが、この記事のテーマは、「全体主義的格差社会の到来と祈りの効用」です。 賢明な読者のみなさんはご承知の通り、小池氏は「全体主義的格差社会」を進める急先鋒的人物です。 石原氏もお仲間です。 豊洲移転問題は、保守派の内部の利権争いにすぎないんじゃないでしょうか。 そんな内輪もめのごたごたで、わいわいやっているうちに、なにやらいろいろまずいことが進んでいるんじゃないでしょうか。   *  *  * ひとつは改憲の問題です。 先の参院選で改憲派は三分の二議席を確保しました。 具体的な改憲に王手がかかった状態です。 改憲の動きをこのあとどのように進めてくるかはまだ分かりませんが、緊急事態条項を盛り込んだ改憲が成立すれば、日本の全体主義国家化はほぼ完成です。 この状況の中、参院議員の山本太郎氏は、三宅洋平氏と組んで「憲法フェス」を行なっています。 改憲の問題点を周知することが重要という考えでしょう。 沖縄・高江のヘリパッド建設反対運動に対する「弾圧」を見れば、現行憲法のもとで、すでに日本の主権在民という基盤はぼろぼろと言っていい状態なのは明らかです。 この上、改憲がなされれば、いったいどんな状態がやってくるというのでしょうか。   *  *  * もうひとつは原発の再稼働の問題です。 福島第一の事故処理が遅々として進まない状況を見れば、原発の即時停止が明らかに合理的と思われます。 にもかかわらず、第二次大戦で戦局が悪化しても停戦に向けて舵を取ることができなかった大日本帝国の時代と同様、作ってしまったのだから止めているわけにはいかないとばかりに、原発の再稼働が進められています。 川内原発は知事の申し入れにも関わらず、九州電力は定期点検まで停止しないという強硬な態度ですし、新潟では原発の再稼働反対で影響力を発揮していた泉田裕彦・現知事が次期の知事選への出馬を直前で取りやめるという「異常

本の紹介:「呪術師カスタネダ」

「呪術師カスタネダ」リチャード・デ・ミル、マーティン・マクマホン; 高岡よし子、藤沼瑞江訳; 大陸書房1983 アメリカの人類学者カルロス・カスタネダはご存知でしょうか。 メキシコでドン・ファンという呪術師に弟子入りした経験を書いた著作で有名な人物です。 このドン・ファンシリーズでは、アメリカ大陸に呪術師の思考体系というものが、欧米の近代的合理主義に匹敵する精緻な体系として、カスタネダの実践を通して物語として語られるところが、実におもしろいところです。 さて、カスタネダに関心のある人には、ぜひこの「呪術師カスタネダ」という本の第二部を読んでほしいと思います。 だいぶ前からこの本のことは知っていましたが、大陸書房というどちらかというとオカルトな出版社から出ているので、ちょっと 怪しさ を感じ、手をつけずじまいでいました。 それが、カスタネダと親交のある フロリンダ・ドナーの「魔女の夢」 を先日読んでみたところなかなか面白かったので、こちらも読んでみることにしたのです。 すると、まったく怪しいところなどない、とても面白い本でした。 アメリカでは別々に出版されている二冊の本をまとめたもので、第一部「呪術師ドン・フアンの世界」は、カスタネダの最初の三冊の著作を手際よくまとめて紹介したもので、それが人類学専攻の学生向きの参考書だというのもおもしろいですね。 この部分は、カスタネダをまだ読んだことのないひとが試しに読んでみるのにもいいと思うし、カスタネダを読み込みたい人にも便利に使えるでしょう。 そして、この本の真骨頂は第二部「カルロス・カスタネダの旅」にあります。 カスタネダの著作はとかく、ノンフィクションなのかフィクションなのか、という視点から論じらたりしますが、著者のデ・ミルは綿密な資料に基づき「カスタネダの著作は事実に基づくフィクションである」と断定します。 けれど彼は、一部の学者の先生方のように、「だからカスタネダの著作はでっち上げのうそっぱちで、これっぽっちも価値がない」というのではありません。 膨大な資料に基づいて、自身の経験も交えて紡ぎ出されたカスタネダの著作を、 C・S・ルイス にも比べられる力を持った小説として評価するのです。 カスタネダへの愛情に満ちた、だかちこそ辛口の批評満載の、評伝かつ評論であ

三宅洋平は応援するに値する人物なのか

ミュージシャンの三宅洋平氏は、テレビに出るような有名人ではありません。 彼は、過去二度の参院選に立候補し、音楽を有効に使った「選挙フェス」という手法で、2013年の比例区では18万票、2016年の東京区では25万票を得票しました。 残念ながらどちらも当選には至りませんでしたが、「反戦・反基地・反原発」の明確な姿勢は評価に値するものと考えます。 一方、三宅氏は、ネット上で「陰謀論者」で「レイシスト」だと非難され、その上「安倍昭恵氏とつるんで、安倍政権に加担している」といった酷評も見受けられます。 果たして三宅洋平氏は、応援し、支持するに値する人物なのでしょうか。   *  *  * 結論から言うと、彼は応援するに値する人物だと思います。 というのは「反戦・反基地・反原発」の明確な姿勢があれば、安倍政権に物申すには十分だからです。 安倍政権の進める日本の「戦争国家化・全体主義国家化」と「原発再稼働」の流れは実に強力です。 残念ながら民進党は、政策のかなりの部分が自民党と重なってしまっており、十分な反対勢力とは言えません。 その他の反対勢力も、十分に国民の気持ちをつかむことができないまま、日本の戦後民主主義はずるずると後退し続けてきたのではないでしょうか。 この状勢において、新しい流れを生み出すことができれば、安倍政権の政策に待ったをかけられる可能性もありえます。 そのとき、「反戦・反基地・反原発」の明確な姿勢に加えて、三宅洋平氏の持つカリスマには大きな希望が持てると思うのです、   *  *  * 現在、国会では、山本太郎氏がよい活動をしてらっしゃいます。 しかし、一人でできることには限りがあります。 そこにもし、三宅洋平氏が続くことができれば、はじめは小さな流れであっても、それがやがて大きなうねりへとつながっていく。そういうことが期待できると思うのです。 最初は点にしかすぎなくても、点の数が増え、点と点がつながって線になり、線と線がつながって面になる。そうした長い目で見るビジョンを持たない限り、世界が変わることは期待できないでしょう。 今、その出発点として、ぼくは三宅洋平氏を応援するのです。 そして、この文章を読んで共感してもらえたら、ぜひあなたにも応援してもらいたいと思うのです。   * 

沖縄高江ヘリパッド建設反対に関わる情報をいくつか

「チョイさんの沖縄日記」(2016年08月23日)より。 沖縄県公安委員会は、今回の援助要求にあたって委員会で協議はしていない。「持ちまわりで決定したので会議録はない」沖縄県公安委員会の要請の前に、警察庁が各地の警察本部に指示を出している。派遣費用も「国庫支弁」 沖縄高江への各地からの機動隊の派遣、変則的なことになっているようです。民主的な手続きにのっとった上で、きっちりとした国民への説明が望まれます。   *  *  * 琉球新報(2016年9月6日15:42)の記事より。 東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に伴う市民らの抗議行動で6日午前、東村高江の新川ダム近くの県道70号上で工事関係車両の動きを封じるために徐行運転していた女性が警察に身柄を拘束された。 徐行運転していただけなのに「地面に押さえ付け手錠をかけて拘束」って、警察にそんなことをする権限があるのでしょうかね。   *  *  * 沖縄タイムスの記事「高江の農家、ヘリパッド抗議に苦情 県道混乱で生活にも支障」(2016年9月8日)より。 県道70号では8月から、市民が「牛歩作戦」として、工事車両の前を時速10キロ未満の速度で走る抗議行動を展開。機動隊の交通規制もあって県道は渋滞し、出荷や作付けする農家を中心に地元住民の往来に支障が出ていた。(中略)当初の機動隊への怒りの矛先は市民側に変わりつつある。 「ヘリパッド反対運動」によって高江の住民の生活に支障があるとしたら問題です。規制をしている機動隊の側には問題はないのか、「反対運動」側と高江住民との意思の疎通はできているのか、ちょっと心配なところです。   *  *  * 人力車夫でラッパーの大袈裟太郎氏の言葉、安倍昭恵氏の沖縄高江訪問について。高江の報告・まとめより。 現地の住民たちの考えは、意外なほどネットに反映されていないものだ。   昭恵氏訪問を良しとする者もいれば、悪しとする者もいる。ただ、そんなのことに拘泥してられないほど、日々の抗議や排除の波は慌ただしいのが現実のところだ。   結局、ネットで叩いているのは、高江のほうも住民のほうも向いていない人々ではないか?   政治活動を笠に着て、誰かに八つ当たりをしてストレス解消したい人々が多いんではないか?  

政治なんてアホらしいですか? ライフネット生命の出口治明氏はこう言ってます

ライフネット生命のCEO、出口治明氏はご存知ですか。 ネット上で、Facebookの創業者、マーク・ザッカーバーグやWikipediaの創設者ジミー・ウェールズ、お笑い芸人スギちゃんなどのポーズを真似したコンテンツでお馴染みかもしれません。 出口氏がなぜそうした若者に受ける大胆な広報活動ができるのか、彼の柔軟さの秘密がこちらのインタビューを読むとよく分かります。 20代の社員に「アホは出口さんです」と言われました インターネットのコミュニケーション 出口治明編 20代の社員にアホ呼ばわりされても、それを鷹揚に受け止め、既成観念に捕らわれることなく、若者の感性を信頼して仕事を任す。 もしそれが失敗しても、そのときはそのときで考えればいいと腹をくくる。 経営者としてはそういう責任の取り方もあるわけですよね。 その出口氏が、次の記事では、誰にでも分かる簡単な投票の仕方を教えてくれています。 「誰も政治を教えてくれなかった」人たちへ(ポリタス 2016年7月3日) こちらのインタビューに肝心の部分がよくまとまっていますので、ちょっと引用しましょう。 出口治明さん「日本はお金の教育をしていない」 ライフネット生命会長に聞く教養とは(ハフポスト日本版 2016年01月27日) ヨーロッパの人と話をすると、選挙は学校で次のように教えられるのです。メディアが事前に選挙結果を予想しますが、その予想通りで良かったら三つ方法があります。投票に行ってその通り書く、白票を出す、棄権をする。すべて同じ結果になります。もしメディアの予想に反対なら、方法は一つしかない。行って違う人の名前を書く。これが選挙ですよと教えるのです。 日本ではこういう当たり前のことが教えられていないから、「ろくな候補者がいなかったら堂々と棄権しなさい」などと変なことを言う評論家がいたりするのです。ヨーロッパでは中学生以下のリテラシーです。 つまり、「社会の現状に納得していないなら、投票に行ったほうがいいですよ、そうでなければ、現状に降参することにしかなりませんよ」ということです。 今、日本の20代の投票率は30%台と、全体の平均の50%台とくらべても、非常に低くなっています。 これは若者自身の責任というよりは、社会の側の責任というべき事態でしょう。 18歳になれば

三宅洋平は権力にすり寄る節操なしではない

2013年、2016年と過去二度の参院選に立候補したミュージシャンの三宅洋平氏ですが、参院選直後、沖縄高江でのヘリパッド建設が強行される中で、安倍総理夫人昭恵氏との会食、そしてその後の昭恵氏の高江訪問へ同行したことが物議を醸しています。 先の参院選での三宅氏の支持者からも、こうした三宅氏の行動を、沖縄の気持ちを踏みにじり、安倍政権に擦り寄るものだという批判の声が上がっています。 また、最近 「週刊SPA!8/30号(8/23発売)」に、安倍昭恵氏との対談が出た こともあり、三宅氏が権力に迎合しているとの主張がネット上で散見されます。 しかし、彼は「選挙フェス」においても、対立ではなく、対話を呼びかけていたわけですから、安倍昭恵氏と対話していることをもって、権力に迎合しているというのは、拙速な判断に思えます。 ぼくは残念ながら三宅氏とお会いしたこともなければ、生で彼の演説や歌を聴いたこともありません。 けれども、彼の「選挙フェス」の動画を見て感じるのは、彼が「反戦・反原発」という確固とした主張を持っている限り、保守側に寝返るわけがないし、保守側が彼を取り込みようもないということです。 とはいえ、三宅氏の言説には、支持者の混乱を招きかねない表現が散見されます。 たとえば、昭恵氏と会食した際に、安倍総理に電話で言ったという「国を思い世界を憂う国士として同じ気持ち」という発言です。 この発言だけを単独で考えたならば、安倍政権の「暴政」を許していると思われても仕方がないでしょう。 さらに、三宅氏は、昭恵氏との会食についての発言に対して「幻滅する」と言われると、それに対して「いくらでも幻滅すればいい」と答えています。 ミュージシャンとファンとのやりとりなら、これでもいいかもしれませんが、仮にも選挙に立候補したものとしては、「与党にすり寄るのも俺の勝手だ」と思われかねない発言をすることは、失言と言わざるを得ないでしょう。 三宅氏は政治家の卵として、こうした発言には十分注意をしていくことが必要でしょう。 同じ流れのツィートで三宅氏は、「私は間違っても自民党改憲草案にほだされるような事はありません」と明言していますから、全体としては、彼の主張は辻褄が合っているのですが、彼の人物をよく知らない人から見れば、当選すると自民党に寝返ってしまう

安倍マリオをぶっ飛ばせ、あるいはぼくらの未来への責任

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[2017/03/17追記: 森友学園問題がメディアでは取り沙汰されていますが、それも所詮「共謀罪」法案通過のための隠れ蓑にすぎないのかと思われる昨今です] 巷では、安倍総理演ずるところの安倍マリオなるキャラクターが話題を呼んでいるようです。 [2016/12/21追記: 安倍マリオもすっかり「昔」の話になってしまいました] どこかチャップリンの「独裁者」を思わせないこともない、この「悪ふざけ」のためにブラジルのリオまでジャンボジェットを飛ばす安倍総理には、ついつい怒りも沸こうというものです。 けれど、安倍総理に対して怒ってみても、そいつはエネルギーの無駄というものでしょう。 もちろん、ぼくは安倍総理が「素晴らしい」とか思ってるわけじゃありません。 第二次安倍政権は、福島第一事故後の、環境汚染、経済的後退、政治的混迷の中から生まれてきた、「危険」な「全体主義」政権だと思っています。 とはいえ、その政権の旗印になっている安倍晋三氏という個人に対して、いくら怒りをぶつけたところで、エネルギーの無駄遣いにしかならないだろうから、「せっかくのそのエネルギーを有効利用したらいいじゃないか」と思うのです。 沖縄高江でのヘリパッド建設の強行を見ても、経産省前の反原発テント撤去を見ても、安倍政権のやっていることは、弱者や少数者の権利をないがしろにする「全体主義」的政策にほかなりません。 しかし、安倍総理と言えども、個人として好き勝手にやっているわけではないでしょう。 安倍総理にしてみれば、合州国の意向に沿う範囲内で、彼なりに国益を考えてやっているのでしょうし、けれども、えげつないやり方をきちんと見れれば、その政策を批判することは当然です。 けれども、「怒りの罵声」を浴びせるようなやり方をいくらしたところで、あちらとしては痛くも痒くもないでしょうし、総理大臣自らが国会で野次を飛ばすという、相手の情けないレベルにまでこちらの立場を引き下げることにしかなりませんから、決してほめられるやり方とは言えないでしょう。 結局のところ、怒りのエネルギーを直接相手に向けても葛藤は深まるばかりなのです。 かといって、怒りの感情を押し殺すことにも益はありません。 ですから、怒りという自然な気持ちを押し殺すことなく、その怒りのエネルギーを、現在の

沖縄高江ヘリパッド反対運動と「子どもの盾」

沖縄・高江のヘリパッド建設反対運動の現場に、子どもを連れてきていた人がいることが、ネット上で取り沙汰されています。 「子どもを反対運動の道具に使うとはなにごとだ」と言い、これを「子どもの盾」とまで言う人がいます。 確かに、安全を確保できるとは限らない反対運動の現場に、子どもを連れて行ったことは、褒められるべきことではないでしょう。 しかし、子どもを連れて行った人が、子どもを反対運動の道具として連れて行ったと主張するのは、乱暴な意見というべきではないでしょうか。 子どもを連れていかざるを得なかった人の事情を想像することもせずに、「反対運動の現場に子どもがいた」ということだけを取り上げ、そのこととネット上の断片的な情報とを組み合わせて、反対運動は「子どもを道具に使う」ような非人間的なものであると主張し、さらにはそれをテロリズムと同一視するような言動は、自由な言論を保障するという民主主義の根本を危うくするものだと考えます。 しかしながら、こうした問題は、ネット上で「反対運動=テロリズム」といった「過激」な主張をする方々を責めたからといって解決する問題ではありません。 ネット上で「過激」な発言をし、「鬱憤」を晴らしている方々も、実のところ、現在の日本に蔓延する様々な「抑圧」の犠牲者であると考えられるからです。 「過激」な発言をし「鬱憤」を晴らす様子は、「いじめの構図」そのものです。 抑圧的状況の中で、自分がいじめに遭わないために弱者をいじめることに加担して、自分の身を守っているのが実情なわけですから、いじめをする人たちを責めるのではなく、この「いじめの構図」をひっくり返す必要があります。 抑圧されるもの同士がいがみ合う「いじめの構図」をひっくり返し、抑圧的状況を変えていくためには、多くの人々が立場の違いを乗り越えて、手を取り合うことが必要です。 もちろん「いじめの構図」をひっくり返すと一言で言っても、それは簡単なことではなく、一朝一夕にできることではありません。時間をかけて少しずつ前進していくしかないことでしょう。 その第一歩としては、「いじめに加担している人たちも被害者なのだ」ということに気づくことが重要です。 急速に戦争国家化が進む日本において、この強力な流れを一気に変えるような劇薬は存在しないように思えます。 とすれ

ホメオパシーに関連して日本のジャーナリズムの問題とカルト的思考、そして三宅洋平

日本語版Wikipedia に 「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」 と題する記事があります。 以前書いた記事 「三宅洋平、ホメオパシー、カルト、民主主義」 でも触れましたが、ホメオパシーを実践する助産師が、出生直後1ヶ月以内に計3回ビタミンKを経口投与するよう厚生労働省が指導しているにも関わらず、それを怠ったために新生児が死亡したとされる事故です。 前回の記事では、Wikipedia の記述に沿って、助産師に問題があったように書いてしまいましたが、死亡事故の原因は分かっていないし、助産師の責任についても明らかではない、とするのが適当であると考えるに至りました。 というのも、この事故については、朝日新聞が「生後2カ月の長女が死亡したのは、ホメオパシーという民間療法をする助産師が適切な助産業務を怠ったためだとして、山口市の女性(33)が助産師を相手取り、約5600万円の損害賠償を求めた訴訟で、助産師側が女性に和解金を支払うことで合意したことが21日、分かった」と報道していますが、和解で解決したため、裁判所は死亡原因についても、助産師の責任についても判断を下していないからです。 また、日本におけるホメオパシーの普及を推進している日本ホメオパシー医学協会は、 朝日新聞によるこの事件の報道について、死亡原因がホメオパシーにあるかのような記事を掲載する、その姿勢を批判しています。 この批判を読む限り、日本ホメオパシー医学協会の主張はもっともなものと考えられます。 日本のジャーナリズムには、「問題」を「創作」する「悪い癖」がないでしょうか。 一方、Mochimasa 氏という方が、この日本ホメオパシー医学協会の主張について、ご自分のブログで批判していらっしゃいます。 [ 山口ホメオパシー訴訟は和解で終結。しかし、ホメオパシー団体は"言いたい放題" ] こちらの記事は「批判のための批判」といった趣きがあり、もっぱら日本ホメオパシー医学協会に対する「攻撃的」な言辞に終始している感があります。 しかしながら、こちらで引用されている日本ホメオパシー医学協会会長の由井寅子氏や、日本助産師会理事の神谷整子氏の主張を見ると、新生児に対するビタミンKの投与について否定的な見方をしており、これがただちに上記の事故の死亡原因となるわ

夫婦茶碗、男女平等、文化相対主義

Twitterでシュナムル氏が、次のように述べています。 フランス人の友達の結婚祝いに夫婦茶碗を送ったら新婦の不興を買ってしまったという失敗話を同僚から聞いた。もちろん「なぜ妻の方が小さいのか、夫より少なく食べろという意味か」と眉をしかめるフランス人の感覚が全く正しいわけだが、それを認識できる日本人はどれくらいいるんだろう。 それに対して、ことだま けむりん氏はこう述べています。 ‏ それは男尊女卑ではなくて、男女の体(手と口)の大きさによるものだから。 けむりん氏の主張は、日本の人には、あまり違和感がないものだろうと思います。 一方で、フランスの方も含め、「欧米」の方からすれば、「なぜ妻のほうが小さいのか」というのも、まったく当然の感じ方だろうと思います。 ここで、しっかりと抑えるべきなのは、この二つの考え方の、 「どちらかが正しいわけではない」 ということです。 シュナムル氏は、フランスの考えに馴染んでいるため、夫婦茶碗は差別的だと言い、 けむりん氏は日本の考えに馴染んでいるため、それは差別とは関係ない、 というわけですが、どちらの主張も、立場が異なっているだけで、間違ってはいないのです。 このような議論があるときに、日本人として気をつけなければならないのは、夫婦茶碗のような、日本人にとっては一見ふつうのものが、他の文化の人から見たとき、まったく差別的なものに見える場合があるということです。 「欧米」の人であっても、「東洋」には別の文化体系があることを知っている人ならば、夫婦茶碗くらいで驚いたりはしないでしょうが、「東洋」の文化をまったく知らない「欧米人」からすれば、夫婦茶碗をはじめ、様々な「東洋」の文化が、「遅れた」、「野蛮」な文化に見えてしまうということがあるわけです。 そこで、こうした見解の相違が生じたときには、自分の文化の一方的な見方を主張するのではなく、相手の文化の見方を受け入れ、尊重した上で、自分たちはこのように考えるのだ、ということを、伝えていくことが大切になります。 「欧米」の文化には学ぶべきところが多々あります。 同時に、日本も含め、東洋の文化にも優れた点はたくさんあります。 どちらかの文化が優れている、というような見方にとらわれることなく、それぞれの文化にはそれぞれの価値があるという、文化

三宅洋平は「許可」を得て安倍昭恵を高江に案内したのか

三宅洋平氏が安倍昭恵氏を、沖縄高江のヘリパッド建設反対運動のテントに案内したことについて、現場の実質的な代表者である沖縄平和運動センター議長の山城博治の「許可」があったのかどうかが、ネット上の一部で取り沙汰されています。 この件については、山城氏のインタビューの動画があり、これを見れば山城氏が「昭恵氏の現場訪問を拒んでいない」ことは明らかでしょう。 [ 山城博治 昨日8/6の安倍昭恵の訪問ほか 中継iwj okinawa1 ] 山城氏はインタビューで確かに、「(昭恵氏を)案内することは許可していない」という意味のことをおっしゃっています。 けれども同時に、「(昭恵氏に)公然と来てもらうわけにはいかないが、目立たないように来てくれるのはかまわない、その場合は自分が話を聞くと言った」と説明しています。 山城氏は昭恵氏がテントを訪れたとき現場にいなかったわけですが、体調不良のため一旦引き上げた際、対応を求めたスタッフに十分意志が伝わらなかったために現場で混乱があったのだとも、説明しています。 また、昭恵氏の訪問については、否定的な見解を述べていますが、昭恵氏の訪問が反対運動にマイナスの影響を与えることはないという主旨の発言をしています。 こうして見ると、「三宅の言う山城氏の『許可』はなかった」とネット上で広め、「三宅の行動は運動の分断を謀っている」といった発言をしている人たちは、現場で反対運動をしている沖縄の方々とは関係のないところで、勝手に「三宅氏排除」を主張しているにすぎないことが分かります。 三宅氏が現場の方々の気持ちを考えることができずに昭恵氏を案内したことは、もちろん問題ですが、「三宅氏排除」を主張する方々も、現場の方々の気持ちを考えていない点については、五十歩百歩ということです。 また、山城氏がインタビューで三宅氏について特に触れていないところを見ると、山城氏自身は三宅氏の行動を運動に上手に役立てているように思えます。 山城氏は、いくらかの混乱はあっても、高江の問題が少しでも知られることが大切だと考えて、昭恵氏の訪問を受け入れたのではないかということです。 なお、今回のように「都合よく切り取られた事実」の拡散によって、歪んだ現実が伝えられることは、場合によっては大きな問題となる場合がありますが、この件については、もとも

三宅洋平、ホメオパシー、カルト、民主主義

[追記: 2016.08.21] こちらの記事では Wikipedia の記述 に沿って、助産師に問題があったように書いてしまいましたが、死亡事故の原因は分かっていないし、助産師の責任についても明らかではない、とするのが適当であると考えるに至り、もう一つ記事を書きました。[ ホメオパシーに関連して日本のジャーナリズムの問題とカルト的思考、そして三宅洋平 ] 「自然志向」の三宅洋平氏は、医療に頼りすぎないほうがよいとの考えを持ち、ホメオパシーなどを勧める発言をしているために「非科学的」で「カルト的」であるとの批判をされています。 けれど、ホメオパシーを勧めることは「非科学的」で「カルト的」なことなのでしょうか。また、それは反社会的で悪いことなのでしょうか。 政策としてホメオパシーを推進するとなれば、これはまた別の話ですが、彼はツイッター上の個人的な発言でホメオパシーを勧めているにすぎません。 こうしたことが一々政治家の欠格条件になるとしたら、日本には政治家などいなくなってしまうのではないでしょうか?   *  *  * ホメオパシーについて、要点を説明します。 ・ホメオパシーは医学的にはプラシーボ以上の効果はないとされています。 ・レメディという砂糖玉を処方するだけなので、有害な副作用はありません。 ・ヨーロッパやインドなどでも民間療法として普通に実践されています。 プラシーボ効果というのは、実際には薬効のない物質を患者に投与した場合、一定の割合で症状が改善する現象のことで、暗示によって自然治癒力が引き出される効果のことです。 普通の薬のような薬効こそありませんが、患者が治療者を信頼してレメディを服用することで、自然治癒力が発揮され症状が改善されるのですから、ここには何ら問題はないと言えます。 むしろ、こうした暗示と自然治癒力の効果を否定し、薬効はあっても同時に副作用も強い現代医学のみを肯定する態度のほうが、よほど「非科学的」なものにも見えます。 それではなぜ、日本ではホメオパシーが嫌われるのでしょうか。 その理由は、ホメオパシーの誤用によって発生した事故によって、ホメオパシー自体が危険であると勘違いされているということです。 2009年に山口県山口市で、新生児がビタミンKの欠乏により硬膜下血腫を起こして死亡する