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2018年2月15日木曜日

14 フロリンダ・ドナー「シャボノ」 -- アマゾンの奥地・ヤノマミ族の暮らし


ここに翻訳を掲載している「シャボノ」は、アメリカのカリフォルニア大学ロスアンゼルス校で文化人類学を専攻した女性作家フロリンダ・ドナーが、アマゾン奥地の先住民族ヤノマミの暮らしを描いたノンフィクションです。

ドナーは、メキシコの呪術師の世界を描いた「ドン・ファン・シリーズ」で知られるカルロス・カスタネダの呪術師仲間でもあり、この「シャボノ」においても、幻覚性植物の摂取による変性意識体験や、シャーマニズムの奥深い世界観が興味深く語られます。

また、ヤノマミの人々は、NHKの番組から劇場公開された「ヤノマミ~奥アマゾン-原初の森に生きる~-劇場版」でも描かれるように、嬰児殺しの風習をもつことで知られます。

第14回目の今回は、作者が幻覚性の物質エペナを摂り、精霊の世界を垣間見る場面が描かれます。

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フロリンダ・ドナー「シャボノ」那賀乃とし兵衛訳、第14回
Frolinda Donner "Shabono" 1982 a Laurel Book
[今回は、四百字詰め原稿用紙35枚ほどの分量です]

☆なお、この作品の簡単な紹介はこちらにあります。
[本の紹介: フロリンダ・ドナー「シャボノ」]

☆第1回〜第13回はこちらです。
[第1回] | [第2回] | [第3回] | [第4回] | [第5回] | [第6回] | [第7回] | [第8回] | [第9回] | [第10回] | [第11回] | [第12回] | [第13回]

[この試訳は編集中のものですが、ネット上で公開することにより、多くの方からのご意見をいただけたらと考え、こちらに置くことにします]

それでは、どうぞお楽しみください。

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**167**
第4部

14

私が聞いた話では、女はエペナの儀式に関しては、どんな部分にも関わりを持たないということだった。エペナの準備に関わることもないし、その幻覚性の嗅ぎ薬を摂ることも許されなかった。エペナの粉を吹くときに使う篠竹の筒にしても、男が特別にそれを取るように頼んだ場合以外は、それに触れることすら礼儀に適わないこととされていた。
ある朝のこと、リティミが囲炉裏に身を屈め、熱心に様子を見ながら、熾き火の上で赤褐色のエペナの種を乾かしていのを見かけて、私はとても驚いた。私が見ていることに気がつかないかのように、リティミは次の手順に進み、木の皮の灰を乗せた大きな葉っぱの上で、乾かした種を手のひらに挟んで揉み始めた。エテワがやるときと同じく、自信に満ちた手際の良さで、時折り種と灰の上に唾を吐きかけながら、柔らかく均質な塊になるまでそれをこね上げた。
種と灰が混ざり合った生地を、熱した土器のかけらの上に移しながら、リティミは私を見た。リティミの笑顔には、私の驚きを彼女がどれだけ面白がっているかがはっきりと表れていた。
「オホーー、強いエペナができるぞ」素焼きのかけらの上で、大きな音ではじけながら割れていく幻覚性の生地に視線を戻しながら、リティミは言った。どんどん乾いていく生地を、滑らかな石で押しつぶしていく。すべてがきめ細かな粉となり、そこには素焼きのかけらの粉も一緒に混ぜ込まれていた。
**168**「女もエペナの準備の仕方を知ってるとは思わなかったな」私は言った。
「女は何だってできるの」リティミはそう言うと、茶色っぽい粉を細長い竹の器に注ぎ入れた。
リティミが私の好奇心に答えてくれるのを、しばらく待ったが無駄だったので、私は結局たずねた。「どうしてエペナの準備をしてるの?」
「私が上手にエペナを作るって、エテワは知ってるから」彼女は誇らしげに答えた。「狩りから戻ったときに、エペナが少し用意されてると、彼、喜ぶんだ」
ここ数日、私たちは魚しか食べていなかった。エテワは狩りに行く気分ではなかったので、他の男たちとともに小さな流れをせき止め、アヨリトトのつるを切って潰したものを水の中に入れた。水は白濁して牛乳のような色になる。あとは、息を詰まらせて浮いてきた魚を、女たちがかごいっぱいに詰めるだけだった。けれども、イティコテリの人たちは魚があまり好きではないので、じきに女や子どもたちが、肉がないことに不満を言い始めた。エテワと男たちが森に入っていってから、二日が経っていた。
「エテワが今日戻るってどうして分かるの?」そう聞いてから、リティミが答える前に、あわてて私は言い足した。「足で感じるのよね?」
笑顔を見せながらリティミは細く長い筒を取り、何度も繰り返してそれを吹いた。「こうやってきれいにするの」そう言いながら、彼女はいたずらっぽく目を輝かせた。
「エペナを使ったことはあるの?」
リティミはこちらに近づいて耳元で囁いた。「あるよ。でも全然よくなかった。ただ頭が痛くなっただけで」彼女は周りをこっそり見回すと言った。「少し試してみる?」
「頭痛はやだな」
「あなたの場合は違うかもよ」そう言うと、リティミは何気ない様子で竹の器と篠竹の筒を籠に入れて立ち上がった。「川に行きましょう。エペナがうまくできたか試してみたいの」
**169** 私たちは堤に沿って、イティコテリが普段水浴びや水汲みに使う場所よりずっと遠くまで歩いた。私はリティミの正面にしゃがんだ。リティミは筒の片方の端から、少量のエペナを慎重に入れていった。人差し指で軽く筒をはじき、エペナの粉が筒全体に広がるようにしていた。私は脇腹を汗が流れ落ちるのを感じた。ドラッグを使ったといえる経験は、三本の親知らずを抜くために麻酔をかけられたときしかなかった。そのときの私は、薬が引き起こす恐ろしい幻覚に耐えるより、歯を抜く痛みを我慢したほうがましかもしれないと思ったのだった。
「頭を少し上げて」リティミはそう言うと、細長い筒を私に向けた。「ラシャの実が先についてるでしょ。それを鼻の穴に当てるの」
私はうなずいた。筒の先にラシャ椰子の実がヤニでしっかりと取り付けられている。実は中がくり抜かれ空洞になり、小さな穴が開けられている。その穴が自分の鼻に収まるように、私は筒をあてがった。長くて折れそうな筒のなめらかな表面に、私は手を滑らせてみた。空気が圧縮されて筒の中を駆け抜ける鋭い音がした。力を抜いて身を任せたが、突き刺すような痛みが、頭のてっぺんまでつら抜いた。「なんなの、これ!」私は呻きながら、頭のてっぺんを手のひらで叩いた。
「じゃあ、もう一発」リティミは笑いながら、筒を私の左の鼻の穴に当てた。
血を流しているのではないかと思ったが、鼻と口から止めどなくが流れ出ているのは、鼻水とよだれだけだとリティミは受け合った。手で拭ってきれいにしたかったが、重たすぎて手を持ち上げることができなかった。
「もっと楽しめばいいのに。おへそまでべとべとだからって構いやしないじゃない」私が何とかきれいにしようとするぎこちない動作を見て、リティミは笑った。「あとで川で洗ってあげるから」
**170**「何を楽しめっていうの?」私はそう言った。体中の毛穴から汗が吹き出し始めていた。気持ちが悪くなり、手足が妙に重かった。赤と黄色の水玉が、視界の至るところで輝いていた。リティミは何がそんなに面白いんだろうと私は思った。自分の頭の中から湧き起こってきているかのように、彼女の笑い声が耳の中に響き渡った。「あなたの鼻にも吹いてあげる」私は言ってみた。
「それはだめ。私はあなたを見てなくちゃ」彼女は言った。「二人とも頭が痛くなって終わりってわけにはいかないから」
「このエペナってやつは、頭痛以上の何かをくれるはずよね」私は言った。「もう少し私の鼻に吹いてよ。ヘクラが見たいの」
「ヘクラは女には来ないけどね」リティミは大笑いの合間にそう言うと、私の鼻に筒を当てた。「でも、あなたが唱いをしたら、ひょっとして来るかもね」
エペナのひと粒ひと粒が、鼻の穴の中を通り抜け、頭のてっぺんの骨にぶつかって爆発するのが感じられた。心地良い気だるさが、ゆっくりと体の中に拡がっていった。私は視線を川面に落とした。その深みから、神秘的な生き物が現れても何も不思議はないような気がした。水面のさざ波が大きな波となって、前に後ろにとしぶきを上げた。その余りの勢いに、私は四つん這いになって後ずさった。水が私を捉えようとしているのだと、私は思った。視線をリティミに向けると、その顔に警戒の色を浮かべているので、私は不思議に思った。
「どうしたの?」私は聞いた。リティミの視線を追ううちに、私の声は小さくなって途切れた。エテワとイラマモウェが私たちの真ん前に立っている。私はやっとの思いで立ち上がると、二人に触れ、自分が幻覚を見ているわけではないことを確かめた。
二人は背中にしょっていた大きな包みを下ろすと、後ろに立つ他の狩人たちにそれを渡した。「シャボノへ肉を運んでおけ」イラマモウェはきつい調子で、そう言った。
エテワとイラマモウェがほんの少ししか肉を食べないだろうことを思うと、私は悲しみで一杯になり、涙がこぼれた。狩人は自分が仕留めた獲物の大半を周りの者に与えてしまう。意地汚さの烙印を押されるよりは、空腹に耐えるほうがましなのだ。「私の分はあなたにあげる」私はエテワに言った。「肉より魚のほうが好きだもん」
**171**「どうしてエペナを摂ったんだ?」声は厳しかったが、エテワは面白がって目を輝かせていた。
「リティミがうまく粉を準備できたか、試してみる必要があってね」私は口ごもりながら言った。「強さが足りないわ。ヘクラが見えないもの」
「いや、十分強いさ」エテワが言い返した。私の両肩に手をかけると、自分の正面に私をしゃがませた。「種から作ったエペナは、木の皮から作ったものより強いからな」彼は嗅ぎ薬を筒に詰めた。「リティミの息じゃ力が足りなかったんだ」悪魔のような笑みで顔にしわを寄せると、筒を私の鼻に当て、一吹きした。
私は頭を抱えて後ろにひっくり返った。頭の中をイラマモウェとエテワの吠えるような笑い声が響き渡った。私はゆっくりと立ち上がった。地面に足がついている気がしなかった。
「白い娘よ、踊るんだ」イラマモウェがうながした。「お前の唱いでヘクラたちが誘い出せるか試してみろ」
彼の言葉に導かれて、私は両腕を広げて踊り始めた。男たちがエペナを摂って踊るときの、粗野で素早い、小さめの足取りだった。
イラマモウェのヘクラの歌の中の一つの、調べと言葉が頭の中を駆け抜けていった。

何日も何日も、
ハチドリのヘクラを呼んだ。
ついに彼女はやってきた。
彼女の踊りに目が眩んで
おれは地面に倒れた。
おれは何も感じなかった、
のどを裂かれるのも、
舌を抜かれるのも。
おれは見ることもできなかった、
おれの血が川に流れて、
水を赤く染めるところも。
彼女は大切な羽毛で傷口を満たしてくれた。
それでおれはヘクラの歌を知っている。
それでおれはこんなに上手に歌える。
**172**
エテワが私を川の際まで連れていき、顔と胸に水をかけた。「イラマモウェの歌はやめろ」彼は言った。「彼の怒りに触れるぞ。魔法の植物で呪われちまう」
彼に言われる通りにしたかったが、イラマモウェのヘクラの歌をやめることはできなかった。
「やめろって言ってるだろ」エテワは頼み込むように言った。「イラマモウェはお前の耳を聞こえなくしちまうぞ。目からは血が流れることになるぞ」エテワはイラマモウェに向き直った。「白い娘を呪わないでくれ」
「呪ったりせん」イラマモウェは受け合った。「この娘に腹など立てておらん。我々のやり方がまだ分かってないというだけのことだからな」彼は私の顔を両手でつかむと、自分の目を私に見させた。「この娘の瞳の中でヘクラたちが踊っておるわい」
太陽の光りに照らされて、イラマモウェの目は、黒と言うより、明るい蜂蜜の色をしていた。「あなたの目の中にもヘクラたちがいるのが見える」そう言って私は、彼の黒目の上で踊る黄色い小さなものをしっかりと見た。彼の顔からは、今までに感じたことのない優しさが放たれていた。彼の名前がどうして「ジャガーの目」なのかがやっと分かったと言おうとしているうちに、私は彼に向かって崩折れてしまった。誰かが抱えて運んでくれたのを、ぼんやりと覚えている。自分のハンモックに運び込まれるやいなや、私は深い眠りに落ち、そのまま翌日になるまで眠り続けた。

**173** アラスウェとイラマモウェ、それにカモシウェ老人がエテワの小屋に集まってきた。私は不安を感じながら三人の顔をうかがった。三人ともオノトで模様を描き、穴を開けた耳たぶには羽根で飾られた短い篠竹の筒を挿していた。リティミがやってきてハンモックの中、私の隣に腰を下ろしたので、男たちの怒りから私を守るためにきてくれたに違いないと私は思った。男たちが口を開く前に、私はエペナを摂ったことについて言い訳し始めた。速く喋ればしゃべるほど、安心できた。言葉を淀みなく話し続けることが、男たちの怒りを収める一番の方法に思えたのだ。
アラスウェがとうとう、私の辻褄の合わないお喋りに口をはさんだ。「早口すぎて、何を言ってるのか分からん」
彼の口調があまりにも優しいので、私は拍子抜けした。それが私が喋ったからでないことは明らかだった。他の二人の様子を見たが、その顔からは漠然とした好奇心の他には何も読み取れなかった。私はリティミに体を寄せながら、小声で聞いた。「怒ってないんなら、どうして皆この小屋に来たの?」
「さあ?」彼女も小声で答えた。
「白い娘よ、昨日以前にも、ヘクラを見たことがあるのかな」アラスウェが聞いた。
「ヘクラを見たことは一度もないわ」私は慌てて否定した。「昨日も見てないし」
「だがイラマモウェは、お前の中にヘクラたちを見たのだ」アラスウェは言った。「彼は昨晩エペナを摂った。彼の胸に住むヘクラが言ったそうだ。ヘクラ自身がお前に歌を教えたのだとな」
「イラマモウェの歌なら、何度も聞いてたから憶えてたのよ」私は叫びださんばかりの気持ちだった。「彼のヘクラがどうやって教えたっていうの? 精霊は女のところには来ないんでしょう?」
「お前はイティコテリの女には見えん」カモシウェ老人はそう言うと、まるで初めて見るかのような目で、私に見入った。「ヘクラたちは簡単に間違える」彼は口の端からしたたる噛みタバコの汁を手で拭った。「ヘクラたちが女のところへ来ていた時代もあった」
「信じてちょうだい」私はイラマモウェに言った。「あなたの歌を知ってたのは、何度も何度もあなたが歌うのを聞いてたからなんだって」
「だが、おれは小さな声で歌う」イラマモウェはそう言って反論した。「本当に憶えているというのなら、今歌ってみるがいい」
これで、エペナの件に片がつくならと思い、私は歌の調べを口ずさんだ。まったく困ったことに、言葉の方は思い出すことはできなかった。
**174**「ほら見ろ」イラマモウェは勝ち誇ったように大きな声で言った。「おれのヘクラがお前に教えたんだ。だからおれは昨日、お前に対して腹を立てたりしなかった。お前の目や耳を潰したり、燃え盛る棒でお前をぶん殴ったりしなかったのも、それが理由だ」
「確かにそうね」私はそう言って作り笑いをしたが、内心は震えていた。短気で復讐心が強く、残忍な仕打ちをすることで、イラマモウェは知られていたからだ。
カモシウェ老人は噛みタバコの塊を地面に吐き捨てると、ちょうど頭の上にぶら下げてあったバナナに手を伸ばした。そして皮をむくと丸ごと口に頬張った。「ずいぶん昔のことだが、女のシャポリがおった」バナナを口に入れたまま、彼はもごもごと話し始めた。「名前はイマアワミと言った。お前のように白い肌をしておってな。背は高く力も強かった。エペナを摂ってヘクラたちに唱うこともした。痛みをマッサージで消し、病を吸い取る術も心得ていた。子どもらの迷い出した魂を探し、敵のシャーマンの呪いを解くことにかけては、彼女に敵うものはいなかった」
「白い娘よ、答えてくれ」アラスウェが言った。「ここに来る前からシャポリを知ってたのかね。お前はシャポリに教わったことがあるのか」
「シャーマンは何人か知ってるわ」私は答えた。「けど、何も教わったことはない」布教所に着くまでに、どんなことをしていたのかを、私は事細かに説明した。ドーニャ・メルセデスについて話し、彼女と患者とのやり取りに立ち会い、記録することを許してもらったことも説明した。「ドーニャ・メルセデスが降霊会に参加させてくれたことがあったの」私は言った。「私が霊媒になれるんじゃないかってね。彼女の家にいろいろな場所から治療師が集まってきてた。皆で輪になって座って、唱いをしながら精霊が降りてくるのを待っていた。ずいぶん長い間だったな」
「エペナは摂っていたのかな」イラマモウェが聞いた。
「いいえ。太くてでっかい葉巻を吸ってたの」そう言って私は、もう少しで思い出し笑いをしそうになった。
**175** ドーニャ・ソレダードの部屋にいたのは十人で、やぎの毛皮でおおわれた、背のない小さな椅子に、誰もが身動き一つせずに座っていた。とり憑かれたような熱心さで私たちは葉巻を吹かした。部屋は煙でいっぱいになり、互いの姿が見えないほどだった。私は何とかトランス状態に入ろうとして、気持ちが悪くなりかけていた。すると、治療師の一人が私に部屋を出るように言った。私が部屋にいる限り、精霊は来ないだろうというのだ。
「お前が出ていったあとで、ヘクラたちは来たのかね」イラマモウェが訊ねた。
「ええ」私は言った。「翌日ドーニャ・メルセデスが話してくれたことでは、精霊たちは治療師のそれぞれの頭の中に降りてきたそうよ」
「奇妙なことだ」イラマモウェは呟いた。「しかし、その女の家で過ごしたからには、たくさんのことを学んだに違いない」
「精霊に捧げるお祈りや唱いは習ったわ。それから、患者さんの治療に使う、野草や木の根の種類についてもね」私は言った。「でも、精霊と交信するやり方や、治療の仕方は全然習ってない」私は男たちの顔を眺めた。エテワだけが微笑んでくれた。「彼女の言うには、治療を学ぶための唯ひとつの方法は、実践することだけだってね」
「治療を始めたのか」老カモシウェが聞いた。
「いいえ。ドーニャ・メルセデスは私にジャングルに行くようにすすめたの」
四人の男たちは互いに顔を見合った。そしてゆっくりと私の方を向くと、ほとんど同時に言った。「お前はシャーマンについて学ぶためにここに来たのか」
「違うわ!」私は大声で言った。それから抑えた調子で付け加えた。「私はアンゲリカの灰を運ぶために来たの」そして慎重に言葉を選びながら、自分の職業がどんなものなのかについて説明した。それは、シャーマンも含めて、人々の生き方を調べることが目的なのであって、私が何かになりたいから調べているわけではない。シャーマンに関わる伝統的あり方の多様性について、それぞれの共通点と相違点を明らかにしたいのだということを。
「ドーニャ・メルセデス以外のシャポリと過ごしたこともあるのかな」カモシウェ老人が聞いた。
私は男たちに何年か前に出会った老人ファン・カリダードのことを話した。私は立ち上がると垂木のところに行き、そこに結びつけてあるかごからナップサックを取り出した。ナップサックの横のポケットはジッパーで開閉するようになっており、それが風変わりな鍵の役目を果たし、女たちの好奇心から守るには都合のよい保管場所になっていた。私はそこから小さな革のポーチを取り出すと、その中身をすべてアラスウェの手の中に空けた。石が一つと、真珠が一つ、そしてバース氏にもらったダイアモンドの原石とを、彼はいぶかしげに眺めた。
「この石は」私はそう言って、アラスウェの手から石を取った。「ファン・カリダードがくれたものなの」石は深みのある金色をしており、すべすべとしているその表面を私は撫でた。私の手にぴったりと収まる大きさだった。楕円形をしており、片方の面は平らで、もう一方の面は丸く盛り上がっていた。
「その男のところで、ドーニャ・メルセデスのときと同じようなことをしてたのか」アラスウェが聞いた。
「いいえ。彼のところには長くはいなかった」私は言った。「怖かったの」
「怖かった? お前は恐れなど知らんのかと思っていたぞ」カモシウェ老人が大きな声で言った。
「ファン・カリダードは実に恐ろしい男だった」私は言った。「彼は私に奇妙な夢を見させて、しかもいつもその中に彼が現れるの。そして朝になると、夢の内容を事細かに私に話して聞かせるのよ」
男たちは互いに顔を見合わせて、なるほどと言うようにうなずき合った。「なんとも強力なシャポリじゃな」カモシウェが言った。「お前に一体どんな夢を見させた?」
私は男たちに一番恐ろしかった夢の話をした。夢はある場面までは、私が五歳の時に起きたことの正確な再現だった。家族で海辺に行った帰り道、父が真っすぐ家に帰るのではなく、森を通って蘭を探そうと思い立った。浅い川の岸辺で車を止めると、父と私の兄弟は薮に入っていった。**177**母は蛇と蚊を嫌って車内に残った。姉が強く誘ったので、私は姉と一緒に岸に沿って、浅い水の中を歩いた。姉は私より十歳年上で、背は高く、痩せていた。カールした短い髪は、日に焼けて色が抜け、ほとんど白く見えた。目の色は、髪がブロンドの場合には普通は青か緑なのに、濃い茶色をしていた。姉は流れの中ほどにしゃがむと、その足元の水を見るように言った。私は戸惑いながら、水が血で赤く染まるのを見た。「怪我をしたの?」私は聞いた。彼女は答えずに立ち上がり、微笑みながら私においでおいでをした。私は怖くなり、水の中に立ちすくんだまま、姉が向こう岸に上がるのを見ていた。
夢の中でも、私は同じ恐怖を感じたが、自分はもう大人なんだから何も怖がることはないのだと言い聞かせた。そして、姉のあとを追って向こう岸の急な堤を登ろうとしたとき、ファン・カリダードの声が、水の中に留まれと言っているのが聞こえてきたのだ。「彼女は死者の国からお前を呼んでいるんだぞ」彼は言った。「彼女が死んだのを忘れたのか?」
どうして私の夢に現れることができたのか、そしてどうして私の姉が飛行機事故で死んだことを知っていたのかについては、どれだけ頼んでもファン・カリダードは決して話そうとしなかった。自分の家族について話したことはなかったし、彼が私について知っていることといえば、ロサンゼルスから治療の実践について学びに来たということだけなのだった。
私のことをよく知っている誰かと知り合いなのではないかと仄めかしても、ファン・カリダードは怒ったりしなかった。私が何を言おうと、どんなふうに彼を責めようと、一旦沈黙を守ると決めたことについては、決して話はしないのだということを彼は繰り返した。そして彼はもう家に帰れと私に言った。
「なぜその石をお前にくれたんだ?」カモシウェ老人が聞いた。
「黒っぽい点々と、表面で交差している透き通った筋が何本もあるでしょ?」私はそう言って、カモシウェの一つだけの目に石を近づけた。「ファン・カリダードが言うには、森の木々と川を表してるんだって。石に現れていることによれば、私は長く森で過ごすことになるだろうから、災難よけのお守りにこれを持っていくようにって」
**178** 男たち四人は長いこと何も言わなかった。アラスウェがダイアモンドの原石と真珠を私に渡した。「この二つについても話してくれ」
バース氏が布教所でくれたダイアモンドのことを、私はまず話した。
「で、これは?」カモシウェ老人が、私の手のひらから小さな真珠をつまみ上げて聞いた。「こんなに丸い石は今まで見たことがない」
「それは長いあいだ持っててね」私は言った。
「ファン・カリダードがくれた石より?」リティミが聞いた。
「ええ、ずっと長くね」私は答えた。「その真珠もある老人がくれたものなの。友だちと一緒に休みにマルゲリータ島に行ったときのことなんだけど。私たちが船を降りると、漁師のおじいさんが私に向かって歩いてきて、その真珠を私に握らせて、言ったの。『こいつはお前が生まれたときからお前のものなんだ。お前がなくしてしまったのを、おれが海の底から拾っておいてやったのさ』って」
「それから、何が起こった?」アラスウェが待ちきれずに聞いた。
「別に何も」私は言った。「私、びっくりしちゃって、気がついたときには、もうそのおじいさんはいなかった」
カモシウェは手のひらの上で真珠を前に後ろに転がしていた。真珠は元からそこにあったとでもいうように、カモシウェの黒くて堅くなった手のひらに馴染み、不思議なほどに美しく見えた。「あなたにあげるわ」私はカモシウェに言った。
にっこり笑いながら、彼は私を見た。「実に気に入ったぞ」彼は真珠を太陽にかざした。「何とも美しい。この石の中には雲がある。お前にこの石をくれた老人はわしに似とったかな」ほかの三人と小屋を出ていきながら、彼はそう聞いた。
「あなたみたいに歳を取ってたわ」私がそう言ったときには、彼は自分の小屋の方を向いていた。私の言葉はもう聞いていないようだった。カモシウェ老人は、真珠を頭の上高くに掲げながら、広場を浮き浮きと歩いていった。

  *   *   *

**179** その後、私がエペナを摂ったことについては、誰も一言も口にすることはなかった。ただ、男たちが夕暮れ時、小屋の外に集まってその幻覚性の粉を吸い込むときに、時として若者が冗談めかして叫ぶことがあった。「白い娘よ、おれたちはお前の踊りが見たいんだ。お前がイラマモウェのヘクラの歌を唱うのが聞きたいんだ」しかし、私はもう二度と、その粉を摂りはしなかった。

☆続きはこちらです。
[第15回]

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☆第1回〜第13回はこちらです。
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