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2016年9月14日水曜日

本の紹介:「呪術師カスタネダ」


「呪術師カスタネダ」リチャード・デ・ミル、マーティン・マクマホン; 高岡よし子、藤沼瑞江訳; 大陸書房1983


アメリカの人類学者カルロス・カスタネダはご存知でしょうか。
メキシコでドン・ファンという呪術師に弟子入りした経験を書いた著作で有名な人物です。

このドン・ファンシリーズでは、アメリカ大陸に呪術師の思考体系というものが、欧米の近代的合理主義に匹敵する精緻な体系として、カスタネダの実践を通して物語として語られるところが、実におもしろいところです。

さて、カスタネダに関心のある人には、ぜひこの「呪術師カスタネダ」という本の第二部を読んでほしいと思います。

だいぶ前からこの本のことは知っていましたが、大陸書房というどちらかというとオカルトな出版社から出ているので、ちょっと怪しさ を感じ、手をつけずじまいでいました。

それが、カスタネダと親交のあるフロリンダ・ドナーの「魔女の夢」を先日読んでみたところなかなか面白かったので、こちらも読んでみることにしたのです。

すると、まったく怪しいところなどない、とても面白い本でした。

アメリカでは別々に出版されている二冊の本をまとめたもので、第一部「呪術師ドン・フアンの世界」は、カスタネダの最初の三冊の著作を手際よくまとめて紹介したもので、それが人類学専攻の学生向きの参考書だというのもおもしろいですね。

この部分は、カスタネダをまだ読んだことのないひとが試しに読んでみるのにもいいと思うし、カスタネダを読み込みたい人にも便利に使えるでしょう。

そして、この本の真骨頂は第二部「カルロス・カスタネダの旅」にあります。

カスタネダの著作はとかく、ノンフィクションなのかフィクションなのか、という視点から論じらたりしますが、著者のデ・ミルは綿密な資料に基づき「カスタネダの著作は事実に基づくフィクションである」と断定します。

けれど彼は、一部の学者の先生方のように、「だからカスタネダの著作はでっち上げのうそっぱちで、これっぽっちも価値がない」というのではありません。

膨大な資料に基づいて、自身の経験も交えて紡ぎ出されたカスタネダの著作を、C・S・ルイスにも比べられる力を持った小説として評価するのです。

カスタネダへの愛情に満ちた、だかちこそ辛口の批評満載の、評伝かつ評論であり、カスタネダに関心を持つすべての人に是非読んでもらいたい本です。

カスタネダをよく知ってているあなたにもきっと新しい発見があることと思います。

なお、デ・ミルがまな板に載せているのは、以下のシリーズ第一作から第四作です。

  呪術師と私―ドン・ファンの教え

  呪術の体験―分離したリアリティ

  呪師に成る―イクストランへの旅

  力の話(講談社から「未知の次元」の題で刊行されていたものの新訳)

この四冊の中では、「力の話」が一冊で十分まとまっていて、カスタネダの世界の核心を突いていますので、カスタネダを初めて読む方にもお勧めです。

ちなみにリチャード・デ・ミルは元々心理学畑の作家ということで、もう一冊カスタネダについて"The Don Juan Papers" という本を出しています。

こちらもそのうち読んでみたいところです。

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[http://d.hatena.ne.jp/suganokei/20080716/1216172549を改稿]

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